朴槿恵前大統領、恩赦 なぜ今、この時点で?

投稿者: | 2021年12月25日

12月24日午前、朴槿恵前大統領(69)の恩赦(特別赦免)が発表された。新年の特別恩赦で釈放される。2017年3月に収監されたので、受刑期間は4年9カ月となる。

文在寅大統領は「統合と和合、新時代の幕開けの契機になることを願う」と恩赦の理由を明らかにした。

次期大統領選挙(22年3月9日)まで75日の時点で発表されたことから、文在寅政権の政治的意図を詮索する向きが多い。実際、与党の大統領候補、李在明は恩赦に反対してきたし、野党の大統領候補、尹錫悦は朴槿恵前大統領を捜査した中心人物だったので、これにより少なからぬ影響を受けるとみられる。

文在寅は、なぜ、今、この時期に恩赦を決めたのか?

恩赦の発表は朴範界・法務部長官は、こう述べた。
「国民大和合の観点から長期間懲役刑を執行中の朴槿恵元大統領を特別恩赦・復権する。朴前大統領が解放されるのは31日午前0時。朴前大統領の健康悪化も考慮の対象となった」

健康問題について、朴敬美・大統領府報道官も、こう語った。
「朴元大統領の場合、5年近く服役したため健康状態がかなり悪化した点も考慮した」

恩赦の一番の理由は、朴槿恵氏の健康悪化だったとみていいだろう。同じく収監中の元大統領、李明博氏(80)は恩赦されなかった。高齢ではあるが、健康上の問題がないためとも考えられる。

収監中、肩や腰(椎間板ヘルニア)の治療を数回受けた朴前大統領は、2019年9月には肩の手術を受け(肩を覆っている筋の回転筋が破裂し、ソウル聖母病院で手術を受け、78日間入院)、今年(2021年)1月と7月にも入院治療を受け、11月にまた入院、現在も三星ソウル病院に入院中だ。最近は精神的な不安症状を見せ、これと関連した診療も受けているという。

病院によると、来年(2022年)2月初めまで入院の予定だという。

朴槿恵氏は腰や肩の疾患以外にも、食べ物がよく噛めず、食事が難しいことによるストレスも強いとのこと。

朴槿恵氏は2006年5月の地方選挙直前、暴漢にカッターナイフで切りつけられ、右耳の下からあごにかけて約11cmの刺傷を負い、約3時間の縫合手術を受けたことがある。このとき、あごの筋肉を損傷し、以降、食事に支障が出るようになってしまったのだが、最近、状態が悪化したという。●東亜日報

まさに、満身創痍。朴槿恵氏は大変な苦痛と闘っているのだった。

文在寅側からしても、この状態は大きな気がかりだった。
「衰弱が進み、獄中死でもされたら…」
もちろん文大統領にとって大きな打撃になり、退任後の「余生」への影響も必至だ。

ついに文在寅大統領は朴槿恵氏の恩赦を決めた。この措置により、彼女は未納罰金150億ウォン(約15億円)も払わなくてよくなり、復権もされ、選挙に出たり公職に就くことも可能となった。

これには左派からの反対もあった。参与連帯など一部の市民団体は「健康上の理由であれば、刑の執行停止を検討すべきであり、恩赦すべきではない」と主張していた。

刑の執行停止ではなく、恩赦とし、復権もさせた理由は何か?

評論家の陳重権は「選挙戦を少し揺さぶろうという意図も見える」と言う。

そして「賄賂·斡旋収賄·背任など『5大重大腐敗犯罪』に対しては赦免権を行使しないという(文大統領の)大統領選挙公約にも反する。朴前大統領の健康の問題なら、まず刑執行停止をし、赦免は次期政権発足後、国民統合のレベルで行った方が良かったのではないかという残念な思いが残る」と述べた。

「選挙戦を揺さぶる」とは、保守陣営の親朴と反朴の対立を惹起し、保守を分断して与党に有利に運ぼうということ。

恩赦が発表されると、朴槿恵氏の支持者たちが午後から病院の前に押し寄せた。集会申請は299人だったのに、実際には500人近い人が殺到したと推算される。●聯合ニュース

クリスマスイブ。病院の外には、大型の垂れ幕やクリスマスツリーが設置されていた。支持者たちは朴前大統領の赦免を祝い、健康を祈った。

万一の衝突を防ぐために警察が阻止線を張ったが、集会は特に衝突もなく続いた。

朴槿恵氏は弁護人を通じて「多くの困難にもかかわらず、赦免を決定してくれた文在寅大統領と政府当局に対し、深甚な謝意を表する」とし、支持者たちにも「心配をかけて申し訳ない。変わらぬ支持と声援を送ってくれて感謝する」と述べた。

恩赦で釈放されたとはいえ、自宅も金融資産も没収されて無一文で住む家もない朴槿恵前大統領。退院後の家探しから始めなければならない状況だ。


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