【須田慎一郎×篠原常一郎 スペシャル対談】（0429）を見て、気になった篠原常一郎さんの発言

4月25日に、北朝鮮の指導者、金正恩が脳死状態にあると伝え、以来、この件で発言を続けている篠原常一郎さんが29日、須田慎一郎さんとの対談を行い、いろいろと問題のあることを話したので、いくつか指摘しておきたい。

【須田慎一郎×篠原常一郎 スペシャル対談】今、北朝鮮で何が起こっているのか？金正恩「死亡説」を徹底分析！

まず、彼は、こう言った。

0855　（※この数字はタイムコード）
北の情報ですからね、ネタ元言ったら命にかかわりますから、私のルートでも何人か死んでいますから、これははっきり言っておきます。向こうの権力の内部に明るい、直接、情報を取れる人、しかも今回が初めてじゃありません。過去、私は文在寅大統領が朝鮮労働党の地下党員であるという証拠をスクープしたことがありますが、このときにですね、いろんな確認を北朝鮮側から取るのに非常に正確な情報を得られたルートです。ここと連絡を取ったところですね、ま、向こうから来たんですが、実は、彼らは実は、昨年10月に脂肪吸引手術を金正恩が2回やったと、２回やる中で、脂肪のかけらが血栓になって心血管に詰まってしまったんだ、という話が来ました。

「私のルートでも何人か死んでいます」とは穏やかでない。本当かどうかは別として、その亡くなった方々への実に冷淡な口調からして不快だ。それから、ここで「文在寅大統領が朝鮮労働党の地下党員であるという証拠をスクープした」と言っている。これは彼が月刊Hanada（2019年10月号）に発表した「文在寅に朝鮮労働党秘密党員疑惑」を指すが、これはガセネタをつかまされたものと推定される。少なくとも本物であると認められる客観的な証拠は何もないものだった。

■月刊Hanada（2019年10月号）篠原常一郎氏のスクープ、文在寅らによる金正恩宛「忠誠誓詞文」の真実　韓国メディアはこれをどう扱ったか？

この「忠誠誓詞文」なるものを篠原さんに持ち込んだ人物について、篠原さんは「非常に正確な情報を得られたルート」としており、この人物が「向こうから」脂肪吸引手術の話を持ってきたということで、どうも、篠原さんは、またひっかけられたようだ。

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日本では報道されないんですけどね、（韓国では）親北化というか、従北化が相当に進んでいましてね、ぼくはあえて、こういうことはしょうがない、仕事のことだから言いますけどね、日本でかつて北朝鮮の専門家と言われた方っていうは、韓国国情院の言ってることを右から左に流すだけだったんですよ。ところが韓国で国情院は事実上つぶれていますから、正確な情報、何もありません。だから皆さん、独自ルートのない人はトンチンカンなことしか言っていません。

「独自ルートのない人はトンチンカンなことしか言っていない」って、その「独自ルート」なるものに頼っている篠原さんこそが「トンチンカンなこと」しか言っていない。そのことに本人も（無理かな？）周りの人たちも、視聴者も早く気づかなければならない。

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ある方がね、本当に大先輩で申し訳ないんだけれど、こういうことをテレビに出られて言われているんですね、韓国の情報っていうのは、我々と違って、北とはヒューミント、同じ民族でヒューミント、人間同士のリレーションで繋がっているから正確なんだ、ということを今でもおっしゃるんだけど、そのヒューミントをぶっ壊したのは文在寅政権なんですよ。（略）もう全部壊されてるわけなんですよね、だからそこに重きを置いていたらまったく不正確な情報しか入らないわけですよ。案の上、その方も重体説については懐疑的ですしね。

これは、西岡力さんのことを言っているようだが、身の程知らずにもほどがあろうという無礼な発言だ。この部分に関する西岡さんの説明を見てみよう。

★山本光一の著書「中国に呑み込まれていく韓国」もぜひご一読ください！

【西岡力】金正恩「死亡」説の真偽やいかに！【WiLL増刊号 #180】

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生きていると思っています。死亡説もありますけれど、死亡説については私は否定的です。
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世界で一番、まぁ、民族も同じですし、ヒューミントもあるし、衛星情報や通信情報はアメリカがたくさん持っていますが、やはり、本当の情報はヒューミント、人の情報ですから、（略）韓国には３万人以上の脱北者もいるということも含めてですね、韓国が一番持っているんですね。ただし、その情報活動は文政権になって、かなり制限されている、ラインがどんどん切れているという話は聞いています。

西岡さんは「国情院の情報活動が文政権になってかなり制限されている」ことをきちんとことわっている。そのうえで、こう説明している。

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（情報機関の研究所の所長は）今回、心臓の手術をしたということについて、そこについては言わなかったですけれど、情報機関としては「あり得る」ということをわざわざ伝えるために（「弁膜に疾患がある」とわざわざCNNの報道の後に言った）。青瓦台は「何もない」と言おうとしているけれど、「何もない」というのは「特異な状況はないと（いうこと）。そこは確かにそうなんです。しかし、病状についてはマル秘中のマル秘で。知っていてもですね、知っているというこ自体、「じゃあ誰から取ったのか」、病状を知っている人はこれくらい（指折りできるほど）しかいないですよね、そうすると知っている人の情報を言ってしまったら、その情報源が殺されちゃうんです。そういうときは嘘をついて良いんです、情報の世界では。（略）
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私は情報機関の研究所の所長が「弁膜に疾患がある」とわざわざCNNの報道の後に言ったことに注目していて、韓国の情報機関も含めて、みんな何かあるのではないか、異状があるのではないか、出てこない理由は何なんだと、いまだに緊張している、一段落はしていない、ということなのではないかと思っています。

CNNの報道というのは、今回の騒動の発端となったもの。米CNNテレビは20日、米情報当局者の話として「金正恩委員長は手術を受け、重体に陥っている」と報じた。

西岡さんは、この情報の扱い方の難しさをよく自覚しており慎重に、ていねいに話している。韓国政府が「特異な状況はない」（「変わったことはない」ということ）としていることを尊重したうえで、しかし韓国の情報機関は婉曲的に手術をした可能性も「あり得る」と言ったとした。今の正恩の状態については情報機関の立場では、知っていても言えない、そんなことをうかつに公にしたら、ごく一握りの「知っている人」のあいだで、誰が情報を漏らしたのかと犯人探しが始まり、情報源が殺されてしまうからだ、と説明している。

このように決して西岡さんは「韓国国情院の言ってることを右から左に流すだけ」ではない。

情報の世界では「嘘をついて良い」ときもある。

そういう認識や、もしかしたら今、重大な歴史の転換期にあるかもしれない朝鮮半島をめぐるさまざまな点を考慮したうえで、西岡さんは「生きていると思っています」と発言した。

これは、ただ金正恩は「生きていると思う」「死んでいると思う」と予想し、後で「当たった」「外れた」と騒ぐような件ではない。

篠原さんはそういうことがまったく分かっていないばかりか、「『大先輩』より、俺のほうが上だ」と言わんばかりの見当はずれな批判をした。そんなことを言う理由も必要もないのに、だ。

なぜか、天狗になっている。本当に度し難く、不快だ！

【追記】
この記事は5月1日の午前11時前にアップした。

翌2日、北朝鮮の朝鮮中央通信が、金正恩が1日に中部平安南道順川の肥料工場の竣工式に出席したと報じ、写真も配信した。少し遅れて朝鮮中央テレビがこのニュースを動画でも放送した。

金正恩は、4月11日の党政治局会議以来、20日ぶりに姿を現し、健在であることをはっきり世界に見せつけたのだった。

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