金敬姫、張成沢(夫)処刑後、初めて公の場に登場したのだが…

投稿者: | 2020年1月27日

2013年12月に夫の張成沢が処刑されて以来、すっかり消息が途絶え、毒殺されたとか、自殺したと噂されていた金正日の妹で正恩の叔母、金敬姫(73)の生存が明らかになった。

金正恩が25日、正月(陰暦)を祝う三池淵劇場での公演を観覧した際に同席し、約6年ぶりに公の場に登場したのだった。

※写真、左から、金正恩、李雪主(妻)、金敬姫(叔母)、金与正(妹)

なぜ、今回、突然、金敬姫を表に出したのか?

北朝鮮ウォッチャーの大方の見方は、政権一族(白頭山血統)の結束を国内外に示した、というものだ。が、では、なぜ一族の結束を示したのか?

相反する2つの理由が考えられる。

ひとつは、実際に権力が盤石であるゆえの自信から。
もうひとつは、権力の基盤が不安定になっているので盤石を装うため。

私は2つ目のほうが可能性が高いと思う。

非核化と制裁解除をめぐる米国との協議は暗礁に乗り上げ、厳しい経済制裁によって国内はひっ迫している。また、残酷な粛清を続けたことで内部の不安や反発が強まっており、実際、未遂に終わったものの暗殺の動きがあったという説も出てきている。

そこで、今、自分の権力は揺らいでいない、とアピールする必要を感じたのだと思う。

しかし、この試みは裏目に出たのではないかと私は見ている。

まず、北の一般人民には存在自体があまり知られていなかった金正男とは違い、張成沢と金敬姫は人民がみんな知っている有名人で、正恩が国家の転覆を謀った裏切り者だとして、叔父であるにもかかわらず、張成沢を処刑したことも人民の記憶に生々しく残っている。

そんな状態で、高齢の叔母、金敬姫を、自分、つまり夫の処刑を命じた甥のそばに座らせる。こういう行為そのものが人民の反感を買うだろうし、さらに、注目すべきはこの日の金敬姫の衣装だ。

金敬姫は、正月の祝いの場にはふさわしくない喪服で登場したのだ。

ちなみに、2011年12月、金正日が亡くなったときに、それを人民に伝えた朝鮮中央テレビの李春姫アナウンサーの姿がこれ。

金敬姫と同じ朝鮮女性の喪服を着ている。

金敬姫は「おまえが夫を殺したことを、私は忘れていない」という強い抗議の気持ちを喪服に込めた。そして、北の人民もそういう彼女の意思を理解したのではないかと思う。

だとすると、一族の結束を誇示するはずが、そうではないことを露呈し、権力が盤石とはいえない状態をさらしてしまったことになる。

それから、正恩には、今回、金敬姫の生存を明らかにし、いっしょに公演を観覧する姿を見せ、粛清に怯える者たちの自分に対する恐怖心をやわらげる、という狙いもあったのではないかと思う。

恐怖心をやわらげる効果…。

いや、明るい色彩の服を着こんだ雪主と与正の間に、漆黒の喪服に身を包み、北では非常に珍しいトレードマーク(?)のサングラスをかけた金敬姫の姿は、逆に、恐怖心を強烈に掻き立てたではないかと思えてならないのだが。

少なくとも、正恩は、この日、三池淵劇場にやってきた金敬姫の姿を見て、一瞬、ぎょっとしたと思う。


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