「日米帝国主義のアジア侵略支配に反対するアジア共同行動」(AWC)という「いかにも」な韓国の市民団体が今月21日、日本に入国しようとして拒否され、韓国に強制帰国させられました。これに怒ったAWCのメンバーらが26日、ソウルの日本大使館前でデモをして、日本政府に謝罪を求めました。
●聯合ニュース 2019.06.26 16:33
「平和活動家の入国を拒否」 日本政府に謝罪要求=韓国市民団体
この記事ではまったく触れられていませんが(おそらく意図的に触れなかった)、今回、珍しく、日本政府が毅然とした姿勢を示したのは、大阪で行われるG20首脳会議に関連しているからでした。AWCは大阪G20首脳会議反対集会にも参加する予定だったのです。
韓国のOhmyNews(左派色の強い市民メディア)がAWCの韓国委員会イ·ギョンジャ運営委員長(女)に、日本大使館前のデモをする前日、25日に電話でインタビューした内容を掲載しました。
●OhmyNews 2019.06.27.午前8:56
日本が空港から追放した韓国人 査察されたと感じた
(以下、翻訳して、引用)
Q:日本に行った理由は?
AWC韓国委員会は毎年、AWC日本連絡会議と労働市民団体の招請で日本を訪問してきた。毎年、韓日両国の主要イシューと闘争事案を共有し、連帯する案を討論していた。闘争現場を訪れたりもした。今回の訪問も定期的な国際連帯の一環とした6月21日に出国し、10日間の日程に参加する予定だった。
Q:元々の日程はどういうものだったのか?
6月21日から30日まで日本の主要闘争の現場を訪問して、地域の団体や活動家たちと韓日両国の懸案を共有して、連帯方策を討論する日程だった。九州や神戸、広島などの地域を巡回し、韓日民衆連帯集会も参加して、特に大阪G20首脳会議反対集会にも参加する予定だった。
Q:日米帝国主義アジア侵略と支配に反対するアジア共同行動(AWC)はどんな活動をしているのか?
1992年10月、日米軍事同盟と日本軍の海外派兵に反対する国際会議が大阪と東京で開かれた。12の国と地域の民衆団体が参加した。この会議で日米軍事同盟と自衛隊の海外派兵に反対するアジアキャンペーン(AWC)の設立が決議された。以来、1995年に「日米のアジア支配と侵略に反対するアジアキャンペーン(AWC)」と名称を変更して活動してきた。
AWCは戦争に反対し、搾取と抑圧、不平等に抵抗するすべてのアジア民衆の闘争に連帯し、国際交流を通じて平和を実現するために努力している。日本連絡会議は、安倍政権の保守化を阻止するとともに、韓国民衆闘争の主要議題である米軍基地、反核、日本軍性奴隷問題にも最も原則的な立場で連帯してきた。
(私自身は)3年前からAWC活動を行ってきた。反核活動をしてみると、核問題は、核発展に伴う核兵器、すなわち戦争の問題であるため、必然的に東アジア、ひいては国際的な関係と密接になった。特に、大田で核再処理実験阻止闘争をしているが、国内よりもむしろ日本で関心が高い。核再処理はプルトニウムの抽出、核武装と深く関連しているためだ。
そのような意味で、AWCの活動は個人的にも多くの学び、幅広い思考と交流の機会となっている。今回の入国拒否がいっそう残念な理由でもある。
※AWC韓国委員会イ·ギョンジャ運営委員長 プラカードの文字は「反核平和活動家の入国禁止、謝罪しろ」
Q:日本の空港で抑留された理由は?
今月21日、福岡空港に到着した。午前11時15分ごろ入国手続きが行われ、指紋や顔認識でのパスポート確認をする過程で、出入国審査をしていた職員が別に調査が必要だと言って、空港職員が使っている別の事務室に連れて行った。前科や犯罪記録がないのに、なぜ検査を(他の人たちと)別にするのかと問い詰めたが、その理由は説明してくれなかった。
この事務室で調べを受けたのだが、なぜ入国したのか、目的は何かと繰り返し聞かれた。「観光で国際交流のために来た」と答えた。詳しい日程はAWC日本会議が流動的に立てた計画に従って動くので、変化があるだろうと話した。しかし、日本の空港職員はなぜ観光に来たのに、具体的な日程が分からないのか、どこを旅行するのか、宿舎はどこか、詳細な旅行日程を出せなど、高圧的な態度を見せた。執拗に質問をしただけではない。かばんの中も調べられた。
これだけではない。さらに、私がフェイスブックに掲載した資料まで突きつけて「2016年に労働党総選挙候補として出たのではないか」「最近、核廃棄物缶詰の模型を公共機関に送って裁判を受けていることを知っている」と、韓国内での活動を問題視した。ひやりとした。ずいぶん前から私を査察していた(マークして調べていた)ような気がした。また、G20大阪の反対集会などのデモに参加するのではないかと追及された。国際法上、政治的な理由で入国を拒否することはできないのに、だ。
今年5月にも、日本に行ってきた。その時も、国際交流と観光が目的だった。しかし、その時は入国を妨げられなかった。日本の出入国管理法および難民認定法では、政治的事案で入国を許可することはできない。
それなのに、福岡空港入国特別審理官は観光目的が明確に立証されないというとんでもない理由で入国不許可を通知し、空港にある収容施設に抑留した。私は、AWC日本連絡会議側に連絡して、異議を申し立てることを決め、異議申請書を書面で作成し、すぐに提出した。インターネットも使えない難民などを収容する収容施設で1日過ごした後、次の日に、日本当局の棄却決定によって強制退去で韓国に帰ってくるしかなかった。
Q:活動が問題にされたということか?
おそらく(28~29日に大阪で開かれる)G20のためであるようだ。AWC日本側の活動家たちはたぶん(ブラック)リストがあって資料が収集されていたはずと言っていた。また、これまで計4回、日本を訪問して戦争反対デモや反核集会現場を訪れていたが、それも問題になっていた。
民主的な国家で、海外旅行客の観光日程を具体的に説明してそれを立証せよというのは、明白な政治的弾圧である。事実上、政治的事案で入国を許さず、国際的非難を避けるため観光目的に合致しないという荒唐無稽な事由を掲げて入国を拒否したのだ。
Q:検察に起訴されたのが問題になったのではないか?
核廃棄物の模型の缶を政府省庁や官公署、マスコミなどに送ったことと関連して、検察が「偽計公務執行妨害」で(1審結審公判で)1年6カ月を求刑した。確実とは言えないが、可能性はあると判断している。しかし、このことは一度、しっかり調べてみなければならない。核廃棄物型缶を政府省庁などに宅配で送ったのは、一種のパフォーマンスだった。
反核運動の企画を立てたときに、誰かが面白そうだと言って行ったことだった。核廃棄物の危険性を知らせるためのイベントだった。そして、パフォーマンスであることを知らせるために模型を造る過程を動画で撮影した。缶の中には核廃棄ではなく、反核メッセージを書いて入れていた。
核発電所地域と大田で、パフォーマンスを行うことにし、まず霊光原子力発電所地域住民や反核団体が80余りの政府省庁やマスコミ各社、申請を受けた市民たちに発送した。宅配便を受け取ったいくつかの所から問い合わせの電話が入り、警察に通報されたりもした。しかし、メディアのインタビューなどを通じてパフォーマンスであること知られ、危険物の申告は撤回され、警察側には2次、3次の発送予定を教えて発送先リストまで提供した。そのため、内部的にはさほど問題にならないという認識だった。その後、大田で2次、27カ所の自治体と政府省庁、マスコミなどに宅配を発送し、その過程はすべてオンラインで公開された。
ところが、多くの地域で郵便局に警察と消防士たちが大挙出動し、放射能測定などをする状況が発生した。さらに、済州では宅配が積まれた船舶のすべての車両と手荷物を統制したため、市民の不満を買ったりもした。事前に対応への指示があった(当局が指示してこういう対応が取られた)のではないかと疑念を抱いている。
Q:なぜG20首脳会議に反対するのか?
日増しに差別と不平等は深刻化しており、世界的な現象になっている。労働搾取と新自由主義は拡大強化され、戦争危機も高まっている。G20首脳会談は、資本と軍需産業を代弁して新自由主義を拡大強化して、労働搾取をさらに固定するための手続きに過ぎない。
パンドラの箱を開けたようなものだ。核問題がそうだ。自分が知った真実を世間に知らせなければならないと思っている。G20首脳会談は、平和ではなく、戦争を語る場だということ。そのことを知ったなら、人々に知らせなければならない。平和を望んでいるからG20首脳会談に反対するのだ。
Q:最後に言いたいことは?
日本政府の反核平和活動家に対する入国禁止は明らかに国際法違反であり、政治活動と国際連帯を弾圧する暴挙だ。強く糾弾し、公開謝罪を求める。それだけでなく、自国民の人権と政治的自由が弾圧を受けている状況にもかかわらず、強い抗議や撤回を要求しない韓国政府の生ぬるい態度にも抗議する。
韓日両国関係は、日本軍性奴隷問題や日帝徴用労働者問題に代表される過去の清算から始めてこそ、進展が可能だ。また、その過程で生まれる韓日労働者、民衆の交流と連帯に対し、いかなる理由でも、弾圧したり禁止する行為を容認してはならない。
(引用 終わり)
1992年に、日米軍事同盟と日本軍の海外派兵に反対して設立された、か…。思い返すに、慰安婦問題が日韓間の葛藤のテーマとなったのは1991年、金学順が初めて元慰安婦として名乗り出て体験を語った時から。だから、ほぼ、同じ時期です。
そして、韓国民衆闘争の主要議題である米軍基地、反核、日本軍性奴隷問題にも最も原則的な立場で関わり、日本連絡会議とも、安倍政権の保守化を阻止するために連帯してきた…。
う~む、典型的な「こんな人たち」、いわゆるプロ市民、チュサパ(主体思想派)、あるいはその影響下にある人々、そういう姿が想起されますね。
今回、日本政府はG20大阪サミットという大イベントを平穏に終えるために、この人たちの入国を拒否したのですが、これまでは入国を認めてきたわけです。
これを今回だけの特別な措置とせず、この種の活動家はもう日本に入れないという毅然とした姿勢を取り続けてほしいものであります。